ランニング中でのペットボトル中身の揺れ音を小さくする

健康志向の高まりもあり、ランニングやジョギングをする方も多くなっていますが、少し長い距離を走る際にはペットボトルなどを取り付けられるウェストポーチを使用する方も多いのではないかと思います。

500mlのペットボトルを満タンにするとボトル込みで500g以上になり結構重いので、ポーチのベルトをきつく締めないとボトルが揺れて走りにくくなりますが、きつく締めると苦しいですよね。

ランニング用ウェストポーチ

ランニング専用のウェストポーチは多くのメーカから販売されており、機能も様々です。

専用のボトルが付属した物もありますが、市販飲料ペットボトルの使用を念頭に入れた物が多く、巻き付けベルトが腰に密着してボトルが揺れにくくした物もあります。

下の写真はサロモン社製で、専用ボトル付きで、腰ベルトも伸縮性があるため密着しやすいらしいです。

ボトルが揺れにくいと走りやすくなりますが、少しずつ中身を飲んでボトル内に空間ができてきますと、ボトル内で中身が揺れてピチャピチャと音をたて始めます。これが割と大きな音になりますので、自分も気になりますし、周りにも迷惑を掛けているかもしれません。

ウォーターバッグ

本格的に長距離を走る方はペットボトルではなく柔軟プラスチック製のハイドレーションバッグタイプを使用されるかもしれませんが、近所を少しだけ走る分には大げさですよね。

私の場合は、以前は登山用で抗菌タイプで柔らかいプラティパスのウォーターバッグを使用していました。

丸めると下の写真のようになりますので、とてもコンパクトですが、ランニング中にこの状態にしないように気を付けたいですね。

使用後は洗浄して、キャップを取って乾かすのが良いと思います。

これは、飲んだ分の空間の空気を抜けば小さくできますので非常に便利ですし、抗菌で本当にカビも付きにくいので、とても重宝しましたが、1リットルタイプですとポーチのボトルホルダには入らないため、少し大きなポーチが必要になるという難点がありました。

0.5リットルタイプもありますので、それを使えば良いのですが・・・。

中身を揺れにくくする検討

ペットボトルでしたら安価で、すぐに新しい物に交換できますので、今回はペットボトルの使用を前提に考えていきます。

どうすれば「中身が揺れにくくなる」でしょうか。あるいは「揺れても音を小さくする」ことができるでしょうか。

まずは誰でも考え付くと思いますが、鍋の落し蓋のような物をイメージしました。

音の直接的な原因は、「中身の揺れ」ではなく揺れで舞い上がった液が落下する際の衝撃音(?)ではないかと思います。

ですから、液が揺れても舞い上がらないようにすれば音も小さくなるように思いませんか?

しかし、ランニング用のウェストポーチはボトルが斜め姿勢になる物や垂直姿勢になる物がありますので、どちらにも対応する落し蓋というのは形状が難しそうです。

そこで、まずはボトル内に緩衝材を入れて効果を確かめてみることにしました。

音の大きさの測定方法

対策の詳細を考える前に評価の方法を決める必要があります。

ボトルが揺れる際の音の大きさを騒音計で測定するのが直接的で良いと思いますが、この実験のために騒音計を購入するのも不経済ですので、スマホのアプリで代替することにしました。

騒音計は下の写真のような物ですが、最近は安価な物がありますね。

アプリですが、無料で使えて比較的評判の良かった Rikki Systems Inc.社の「Sonic Tools SVM」にしました。

絶対値を測定するには市販の騒音計が正確とは思いますが、今回は対策の効果を把握することが目的で、対策の前後の差が分かれば良いと思いますので、アプリで十分ではないでしょうか。

測定結果は下の写真のように表示されます。下のメニューの中から「音声実効値」を選択して測定を開始しますと、画面右上に、最大値・平均値・最小値が変化していきます。

最大値は、実験方法によってバラツキが大きくなりますので、今回のような適当な実験では、平均値で評価する方が比較的信頼性が高いと思います。

ボトル内に緩衝材を入れる

今回は、百円ショップで簡単に入手可能なゴム素材の物を3種類用意して、実験してみました。

  • シリコン製コースター
  • すべり止めシート(粗目)
  • すべり止めシート(細目)

 下の写真がコースターです。

下の写真がすべり止めシート(粗目)です。

下の写真がすべり止めシート(細目)です。

内部に緩衝材を入れた実験

ペットボトルは600mlと300mlの2種類を使用して、それぞれに半分程度の水と上記の緩衝材を入れて実験を行いました。

本来は機械を用いて一定の振幅で実験を行うのが望ましいのですが、今回は手で適当にボトルを振って行いました。

1.600mlボトル+水半分

2.300mlボトル+水半分

3.600mlボトル+コースター

4.300mlボトル+コースター

5.600mlボトル+すべり止めシート(粗目)

6.300mlボトル+すべり止めシート(細目)

7.600mlボトル+すべり止めシート(粗目)

8.300mlボトル+すべり止めシート(細目)

ボトル内に緩衝材を入れた場合の測定結果

測定結果を下表に示します。

ボトル容量(ml)  緩衝材種類  ボトル角度(°) 最大騒音値(dB) 平均騒音値(dB)
600 なし 90 57 49
300 なし 90 54 48
600 なし 30 58 46
300 なし 30 56 47
600 コースター 90 55 45
300 コースター 90 54 44
600 コースター 30 53 45
300 コースター 30 50 42
600 シート粗目 90 46 36
300 シート粗目 90 50 39
600 シート粗目 30 51 41
300 シート粗目 30 45 40
600 シート細目 90 50 42
300 シート細目 90 50 40
600 シート細目 30 46 36
300 シート細目 30 51 40

ボトル内に緩衝材を入れた場合の結論

どの緩衝材も、ある程度の効果はあるようですが、すべり止めシートの方がコースターよりは効果が大きいようです。

実験で感じたのは、「すべり止めシートに腰が無いため、ボトルの内面に張り付くような状態にはならないので、シートとボトルの隙間内で水が跳ねて音が大きくなる」ということでした。

実際に300mlボトルに細目シートを入れて走ってみましたが、感覚的には音量が半分以下になったように思いました。

6dB小さくなりますと音量は半分になるということですので、実験結果と割と近いのではないかと思います。

しかし、ボトルの口が小さいので、いずれの緩衝材も出し入れが大変です。衛生面を考えますと、使用後は緩衝材を取り出して乾燥させたいところですが、手間が掛かってしまいます。

以上から、今回の「ボトル内に緩衝材を入れる」方法は、効果はあるものの、使い勝手の面や衛生面で問題があると思いますので、さらに試行錯誤を続けることにします。

落し蓋を検討

次は先述しました落し蓋を検討してみます。

「ボトルの姿勢(倒れ角度)が一定であれば機能するのではないか」と想像しますが、万能性は低そうです。

さらに、落し蓋が常に液面で浮いていてくれれば良いのですが、ボトル側面に貼り付いたりしそうな気もします。

液面に浮かなければなりませんので、比重は高くても0.8以下にしなければならないと思いますが、ゴムの比重は大抵1.0以上ありますので、沈んでしまいます。

発泡系の軽い材質が良さそうですが、軽くて柔らかくてボトルの口から入れられるような良い材質があるでしょうか。

私たち機械屋の御用達であるミズミさんのカタログで調べてみましたところ、ゴムスポンジが比重が低くて良さそうです。

種類が色々とあるのですが、比重が0.15程度のEPDMスポンジの厚さ3mmと、比重が0.21程度のNBRスポンジの厚さ3mmの2種類を購入してみました。

入荷したシートが下の写真です。

落し蓋の試作

今回は300mlのボトルのみで実験してみます。

硬めのスポンジの方が具合が良さそうでしたので、硬めの方をボトル内で浮くような形状にカットしました。

ボトルの中に入れると下の写真の状態になります。スポンジが液面に浮いていますね。

落し蓋の実験結果

前回の実験と同様にボトルを上下に振って、スマホアプリで騒音測定しましたところ、

最大値56[dB]、平均値46[dB] 程度で、残念ながらほぼ効果なしでした。

スポンジが常時水面に貼り付いていてくれれば効果はありそうですが、期待通りにはいかずに、スポンジが暴れて水面から離れてしまいました。

ボトルを斜めにした状態用のスポンジも製作しようかと考えていましたが、諦めました。

この方法は完全に失敗ですね。

ボトルの外側での消音を検討

これまではボトルの中を細工して消音を試みましたが、外側で可能でしたら、その方が衛生面を考慮しますと良いはずです。

そこで、今回はボトルの外側をカバーすることにより消音する方法を検討することにしました。

軽くする必要があることと、遮音性を考慮しますと、前回の実験で使用したゴムスポンジが適しているのではないかと考えましたが、問題は「どのような構造にするか」です。

コストを考えなければ一体成型が望ましいので、とりあえずは手作りで製作することにしました。

ボトルの外側カバーの製作

ハサミで適当に輪郭を切ったので不格好ですが、下の写真の物を作ってボトルに巻き付けました。

ボトルに巻いた状態が下の写真です。

スポンジが黒くて状態が分かりづらいですね、すみません。

ボトルの外側カバーの実験結果

前回と同じ方法で実験しましたところ、

最大値53[dB]、平均値44[dB] 程度で、期待したものの今回も残念ながら効果は小さかったです。

使用したスポンジは、EPDMという材質で独立気泡(気泡がつながっていない)ですので、防音効果はあると考えていたのですが、期待外れでした。

全体を隙間なくカバーしたわけではないので、音が漏れたのかもしれません。

材質と構造を変更してボトル外側カバーの製作

スポンジの材質を前回より硬めで比重も高く、同じ独立気泡の物に変更するとともに、隙間が少なくなるように、ハリボテでカバーを製作してみました。

材質と構造を変更したボトル外側カバーの実験結果

今回も前回と同じ方法で実験しましたところ、最大値53[dB]、平均値43[dB] 程度でした。

前回より多少は音が小さくなりましたが、今回も残念ながら効果は期待したほどではなかったと言えます。

より完全に密閉できれば効果が大きくなるとは思いますが、なかなか安価に実現するのは難しいように思います。

やはり、「発生した音を防音する」よりも「音の発生を抑制する」方が良いのでしょうか。

ここまでの所感

いろいろと試してきましたが、コストや効果を考えますと、すべり止めシートをボトル内に入れるのが良さそうです。

ボトルから取り出すのが少々大変ですが、割りばし等で挟んでクルクルと回しながら絡め出すと比較的簡単に取り出すことができます。

もし他に良い方法を思い付きましたら追記するようにいたしますので、少しだけご期待ください。

なかなか下らない実験を繰り返してきましたが、商品化は難しそうですね・・・。

 

ここまでご覧下さいましてありがとうございました。

シェアする

フォローする